開業から間もなく、2020年——世の中は、新型コロナウイルスの流行によって、一変しました。
自粛という言葉が日常になり、先の見えない不安の中で、「このサロンは、この先どうなるのだろう」そんな気持ちばかりが募っていきました。
正直、不安しかありませんでした。
それでも、そんな状況の中でも足を運んでくださる、支えてくださるお客様。
「ここがあるから頑張れる」
「やっと来られました」
その一言一言に、何度も救われ、背中を押されました。
そして、少しずつ日常が戻り始めた頃。
不思議なことに、お客様は、そこから増えていきました。
静かに、でも確かに、人の流れが変わっていくのを感じていました。
そんな中で、私は次第に、マンションの一室で続けていくことに、限界を感じるようになります。
順調に見えていた日々の裏側で、私は少しずつ、無理を重ねていました。
予約が増えることは嬉しかった。
頼ってもらえることも、ありがたかった。
けれどそのすべてを、一人で抱え続けていたのです。
施術も、カウンセリングも、準備も、片付けも、事務作業も。休む時間さえ、次のことを考えていました。
「まだ大丈夫」「私がやればいい」そう言い聞かせながら、気づけば心と身体の余裕は、少しずつ削られていきました。
そんな時 タイミングよく、今のサロンの場所と出会いました。
マンションの一室よりも、倍ほどの広さ。
ベッドを二つ置ける空間。
嬉しさと同時に、不安も大きくなりました。
この場所を選ぶということは、これまでと同じやり方では、続けられないということ。
一人で続けるのか。
誰かと一緒に続けていくのか。
スタッフを雇うという選択は、私にとって、とても大きな決断でした。
任せることへの怖さ。
想いが伝わるのかという不安。
守るものが増える責任。
それでも「一人で続ける」ことと、「大切にし続ける」ことは、必ずしも同じではない。
そう、少しずつ気づき始めた頃、香月の物語は、静かに、次の章へ進み始めます。





