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香月の物語-芽-②

開業から間もなく、2020年——世の中は、新型コロナウイルスの流行によって、一変しました。

自粛という言葉が日常になり、先の見えない不安の中で、「このサロンは、この先どうなるのだろう」そんな気持ちばかりが募っていきました。

正直、不安しかありませんでした。

それでも、そんな状況の中でも足を運んでくださる、支えてくださるお客様。

「ここがあるから頑張れる」

「やっと来られました」

その一言一言に、何度も救われ、背中を押されました。

そして、少しずつ日常が戻り始めた頃。

不思議なことに、お客様は、そこから増えていきました。

静かに、でも確かに、人の流れが変わっていくのを感じていました。

そんな中で、私は次第に、マンションの一室で続けていくことに、限界を感じるようになります。

順調に見えていた日々の裏側で、私は少しずつ、無理を重ねていました。

予約が増えることは嬉しかった。

頼ってもらえることも、ありがたかった。

けれどそのすべてを、一人で抱え続けていたのです。

施術も、カウンセリングも、準備も、片付けも、事務作業も。休む時間さえ、次のことを考えていました。

「まだ大丈夫」「私がやればいい」そう言い聞かせながら、気づけば心と身体の余裕は、少しずつ削られていきました。

そんな時 タイミングよく、今のサロンの場所と出会いました。

マンションの一室よりも、倍ほどの広さ。

ベッドを二つ置ける空間。

嬉しさと同時に、不安も大きくなりました。

この場所を選ぶということは、これまでと同じやり方では、続けられないということ。

一人で続けるのか。

誰かと一緒に続けていくのか。

スタッフを雇うという選択は、私にとって、とても大きな決断でした。

任せることへの怖さ。

想いが伝わるのかという不安。

守るものが増える責任。

それでも「一人で続ける」ことと、「大切にし続ける」ことは、必ずしも同じではない。

そう、少しずつ気づき始めた頃、香月の物語は、静かに、次の章へ進み始めます。

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